こんにちはー
4月29日、僕は金沢工業大学で行われたシンポジウム「現代建築文化のアーカイブス」に行ってきました。
建築の図面、スケッチ、写真、パースなどをアーカイブする機能として、日本建築家協会(JIA)と金沢工業大学(KIT)が協力し「JIA・KIT建築アーカイヴス」を設立することになり、開設を記念して世界の有名建築家のドローイングコレクションの展示会とシンポジウムが金沢工業大学で開催されたので、そのレポートをお届けしまーす。
JIA・KIT建築アーカイヴスは
(1)消滅や散逸しがちな近・現代建築の設計図書類を収集、整理、保存し公開。
(2)国内外の建築系アーカイヴス機関と連携し、ネットワークを構築。
JIA・KIT建築アーカイブスはKIT内に設置され、建築の構想から実施・施工に至るまでの過程において制作された図書および写真・CG等のデジタル画像を収集。また模型については、その存在やデータなどを収集するそうです。
記念講演「建築設計ノート」/ 内藤 廣(建築家・東京大学大学院教授)
まず大学の先生でもあり、建築家でもある内藤廣さんの講演会。今の学生のスケッチの仕方、道具と自身の違い、若い頃に勤めていた頃のフェルナンド・イゲーラスとの体験談、日本で事務所を開設し実務をこなすにあたり、どうそのスケッチが活かされるかを自作の「島根県芸術文化センター」のスタディもあわせて解説しました。
スケッチの仕方も色々あって手で引く、肘からひく、体全体にひく。どうかくかでまた違った建築がイメージされます。その人なりの創作するスケッチを苦労して作り出して、手と頭が相談して線が描かれていきます。現代のパソコンは手(操作)と見る場所(作業)が違います。それは変なことが起きている。内藤さんは赤のペンと修正液でスケッチを描くそう。その時のスケッチを貼付けていくそうです。
島根県芸術文化センターではどういったものがそこにあり、そこに求められているか、敷地の大きさを身体化する作業としてスケッチを繰り返し行ったそうです。
現在の建築業界は構造家、設備家、施工会社、職人などそれぞれの職種の関係が空洞化し、またそれぞれが高度化しています。建築家はそれをつなげなければいけない役割もあるのですが、イメージする建築を伝達する手段としてもスケッチは役立ちます。
講演会では建築設計においてスケッチ、パースなどの「スタディ」という作業の意味することを分かりやすく説明されました。そういう建築の設計にどう関わるかを理解して、アーカイブで集まってきたモノを見て何を感じ取るか。そうするとスケッチは先代の人々がそこでなにを考えていたのかを感じることができますね。
パネルディスカッション「現代建築文化のアーカイブス」
つづいて内藤廣さんに加えてコーディネーターに水野一郎さん(金沢工業大学教授)、パネラーには大宇根弘司さん(JIA建築アーカイブス委員長)・竺覚暁さん(KIT建築アーカイブス研究所所長)が参加してディスカッションが行われました。テーマは「現代建築文化のアーカイブス」について。
DAAS、米国議会図書館などの海外のアーカイブ機関の事例紹介と、量が増えるアーカイブの保管方法について、またアーカイブされたものをどう利用していくかが話し合われました。
現在、ほとんどの建築事務所では事務所の業務を終え、閉鎖すると図面やスケッチ、模型も処分されるそうです。そのため緊急避難で集めないといけない。それが価値があるかないか
また、地域のアーカイブスとしてそれが社会的にどう定着するのでしょうか。どのように見ることができて、どのように地域と関係するのか。質問でもでました建築そのものの保存もまたあると思います。大谷幸夫の建築、村野藤吾の建築も金沢にはあります。伝統的な昔の日本の町家もあります。アーカイブする、保存するということが建築そのものを国民と共有することに繋がっていくと景観もまたよくなるかもしれないですね。
あわせて企画された展示会「Nコレクション展」も見てきました。ジョン・ヘイダック、レム・コールハース、リチャード・ロジャース、ルイス・カーン、安藤忠雄などなど。巨匠のスケッチの躍動感を楽しみました。
JIA・KIT建築アーカイブスの取り組みに乞うご期待ですね。
(NN)
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