みなさま。
いつもお世話になっております。
いきいき荘から寺町にCAAKが引越をして、もう1年ですね。
この1年は、寺町町家でのレクチャー&パーティーに加えて、カラニワ展2008、折り紙カフェなどの展覧会を開催しました。
いろいろな方に出会え、楽しい時間をみなさまと共有し、普段と違う町家の魅力を見る事ができ良かったなと感じています。
みなさまも、普段と違う表情を見せた町家で、楽しかったなと感じていただけましたでしょうか?
これからも、不定期ですがCAAK企画の展覧会をしていきます。
お忙しいと思いますが、次回の展覧会に足を運んでいただければと思います。
話は変わって、今回は建築史家である倉方俊輔さんのレクチャーでした。
テーマは、「吉阪隆正を読み直す --自然、集団、動物的--」です。
吉阪隆正は、戦後間もない1950年にフランスに渡り、建築家ル・コルビジェのアトリエで2年勤務した、日本を代表する建築家です。
元来、吉阪隆正は、日本近代建築史の研究者でした。吉阪が日本で出版した『住居学汎論』をコルビジェに見てもらうと、コルビジェは『これはすごく良い解釈だが、おまえの提案はどこにある。』と言ったそうです。この言葉は、吉阪の中に長く残ったそうです。建築史の研究者から建築家として突き進ませた要因の一つかもしれませんね。
吉阪隆生は、必ずしも理性的だけでない人間がどうやって共存できるのかを提示することが建築の役目だと考えていたようです。一方で、理性的に人間をみておらず、ある意味ヒトを動物的に考えていたのかもしれないとの事でした。
吉阪隆正の代表作である自邸となる吉阪邸や大学セミナーハウス、呉羽中学校などの建築物から吉阪隆正の設計の特徴や考え方などを紹介していただきました。
吉阪邸は、各階を人工土地(スラブ)として考え、土地を買い、思い思いの家を建てることで日本の住宅問題を解決し、みんなが幸せになると主張しました。
八王子にある大学セミナーハウスは、大きな敷地全体に宿泊施設や図書館など様々な用途の建物が丘陵地にバラバラにちりばめられています。
そのため、谷筋に連続する個室が自然に出来た集落のように見えたり、自然の中にある建物と建物で挟まれることによって廊下がケモノ道のように見えます。
建物の外部廊下は、自然の中にある道から連続して建物をつないでいます。これは、建物だけでも意味をなさず、土地だけでも意味が理解する事ができません。自然に溶け込むことや傷つけないことと反対に、自然に食い込んでいくことで自然も含め全て人工化して新しい意味が生まれました。傾斜と建築が合わさって初めて意味をなす動線なのですね。
呉羽中学校は、ひょうたん型であるために、写真一枚で中庭全体を撮ることが出来ず、体感しないと、建築がどう見えるかわかりません。
通常、学校の廊下は水平方向のみに広がる空間です。けれども、呉羽中学校の廊下は、中庭に面したベランダ状の外廊下のため、水平方向だけでなく垂直方向にも空間的につながりを持ちました。
そのため、建物の機能が元々結びついていなくても、建物を使っていく中で運動部の練習するフィールドとして使ったり、集会時には生徒が廊下に出て中庭を囲み、劇場のような風景が生まれました。
通常、ある形を与えると決まった機能と使い方しか出来ませんが、呉羽中学校の場合は、形から新しい使い方が生まれたことはすごいですね。単純なルールを集めることで、複雑なルールが構築される・・・簡単なようで、難しいです。
こうした、吉阪隆正が設計した呉羽中学校の校舎は、既に取り壊されてしまい、もう体感することが出来ず、本当に残念です。
レクチャー後は、みんなでパーティー。
金沢工業大学に設立されたこともあり、吉阪隆正の話だけでなく、建築アーカイブスに関する話題も。
倉方さんありがとうございました!
また、次回CAAKレクチャーシリーズをお楽しみに!!
(YW)