■CAAKのコンセプト
「美術」と「建築」の横断
今日「建築」とか「美術」とか呼び倣わされて隔てられている二つの領域が、本来分ち難く結びついたものであることは、古代からの歴史を振り返るまでもなく明白だ。近代に「美術」を展示するためにつくられた制度である美術館もまた、「建築」やデザインを扱ってきた。技能よりもコンセプトの比重が高まったコンテンポラリー・アートの時代にあって、ジャンルの横断は必然でもある。にもかかわらず、学問をまず文系・理系に分つ日本の教育体系の弊害として、両分野のコミュニケーション不足は否めず、お互いの領域とは何かを問いつつ「美術」と「建築」を横断する活動が求められている。
レジデンス/コミュニケーション/セルフ・エデュケーション
我々は、人や「場」との関わりのなかで生まれる美術、使う人の要望や敷地の文脈、都市との関係性のなかで立ち上がる建築を重視したい。プロセスとサスティナビリティこそ、今日もっとも重視せらるべき事柄である。制作者と観客、あるいは設計者とクライアントが、互いに学ぶ場を自らの手でつくることが求められている。レジデンス機能とそこで発生するコミュニケーションが、作品の源となるであろう。
オルタナティブ・ネットワーク
人口密度があがるに従い、美術や建築のフラグメントが濃く集積するのは当たり前だとしても、ニューヨーク、ロンドン、パリ、東京といった大都市への一極集中は、様相の画一化という弊害を招いてもいる。閉じて画一化した美術や建築は、わずかな差異によってサーキット化され、消耗されてゆく。
そんななか、これまで周辺地域と見なされてきた都市間のネットワークに可能性が見いだされる。未だヒューマンスケールと、その都市独自のアウラが資本主義に凌駕されることなく残る街、例えば那覇、ソウル、上海、台北、東南アジアや北欧、ベネルクスの中都市といった諸都市と個別の独自のネットワークを構築できたなら、これまでとは全く異なる関係性の中から新しい作品や空間のあり方が発見されることだろう。
日本海側にあり、海を隔てて大陸に向かう金沢は地政学的にも東京とは異なる独自の位置を占め、生活を大切にする価値観とジャンルを超えた人のつながりが受け継がれている希有な都市である。
我々はこの金沢を起点に、「もうひとつの」ネットワークを結んでいくことを目指す。 |